腎臓・泌尿器科とは?

動物の泌尿器(腎臓、尿管、膀胱、尿道、前立腺)に関する疾病を診断・治療を行う診療科です。腎泌尿器系は体内の老廃物の除去や血液の浄化、電解質の調整など、生命活動に欠かせない役割を担っています。

気になる症状

  • 頻尿
  • トイレに行くが尿をしない
  • 粗相をする
  • 血尿
  • 多飲多尿
  • 体重の減少
  • 食欲の不振
  • 嘔吐や下痢
  • 脱水

検査内容

  • 尿検査
    尿を検査することにより腎機能の評価を、尿の性状により炎症や感染症、代謝異常や尿石症の有無も評価することが可能です。
  • 血液検査
    血液検査により、腎臓の機能について情報を得ることができます。血液中のSDMA、尿素窒素、クレアチニン、グルコース、総蛋白、総コレステロール、電解質、無機リン、カルシウムなどを測定し、腎臓の機能の異常の有無を調べます。
  • 尿微生物学的検査
    尿中の細菌、真菌、原虫などの病原微生物の存在の有無を光学顕微鏡で観察します。細菌や真菌であれば薬剤感受性試験を行い、適切な抗菌薬や抗真菌薬の投与に役立ちます。
  • X線検査
    腎臓の形状やサイズ、尿路結石や前立腺のサイズや形状の評価をするために、腹部X線検査が行われます。
  • 造影X線検査
    腎臓から尿管といった上部尿路の形態や流れを評価するために排泄性尿路造影が、膀胱から尿道といった下部尿路の評価については逆行性に尿路造影が行われます。また、膀胱粘膜の評価のためには二十膀胱造影が行われます。
  • 腹部超音波検査
    腎臓、膀胱、前立腺の形状や大きさ、血流の評価、腫瘤の有無や結石などの病変がないかを調べます。また、尿管や尿道の拡張や結石や腫瘤の有無を調べることが可能です。

代表的な病気

  • 腎盂腎炎
    腎臓の炎症を示します。細菌やウイルス、真菌等の感染、自己免疫疾患、肝臓や心臓等の疾患、薬物、毒素等が原因となって発生することがあります。腎盂腎炎の症状としては、発熱、食欲不振、嘔吐、下痢、尿の色や量の変化、尿が出にくくなる等が挙げられます。治療は基礎疾患のコントロールと起因菌に対する適切な抗菌剤の投与がメインになります。
  • 急性腎不全
    突然腎障害が起こり、急速に進行し、腎機能が数時間から数日で急激に低下する病気です。尿がほとんどまたはまったく出ない、食欲不振、元気消失、嘔吐、脱水などの症状が現れますが、重度の場合は、血液中の毒性物質が排泄できなくなり、尿毒症に陥ります。急性腎不全は、短時間で絶命するケースもあるため、早急な対応が必要です。
  • 慢性腎臓病
    腎臓の機能が徐々に低下し、老廃物や水分の排出が不十分になる病気のことです。病因は様々で、加齢や糖尿病、高血圧などの生活習慣病や、腎炎や尿路感染症などの腎臓に直接作用する疾患、また遺伝的な要因も関与しています。初期には症状が現れないことが多く、多飲多尿、運動不耐性や食欲不振、嘔吐や下痢、また尿量の減少、尿毒症による神経症状などの兆候が現れることがあります。治療はそのステージに準じ、食事療法、ACE阻害剤やARBの投与、リン吸着剤の投与、水和状態に応じて輸液療法を実施します。
  • 腎性高血圧症
    腎臓の機能低下により高血圧になる症状です。 腎臓は体内の血圧を調整する役割をもっているため、腎臓の機能が低下すると、体内の血圧が上昇しやすくなります。腎性高血圧症を起こすと、視神経や網膜のダメージのリスクが高くなる、腎臓の機能の低下を進行させる、その他の臓器の損傷につながるといった危険があります。
  • 糸球体腎症
    腎臓の中の血液をろ過するはたらきのある糸球体に炎症が起こる病気です。はっきりとした原因はわかっておらず、感染症、腫瘍、免疫の病気などが関係しているのではないかと言われています。
  • ファンコーニ症候群
    腎臓の近位尿細管の機能不全によってさまざまな症状を引き起こす病気です。原因は先天的なものと後天的なものがあり、先天的なものは遺伝性、後天的なものでは、重金属や薬物の摂取、自己免疫性疾患および腎疾患などによって発症します。
  • 尿路感染症(膀胱炎、尿道炎)
    細菌が尿管、膀胱、尿道などの尿路に侵入して炎症を引き起こす病気のことを指します。尿路感染症の原因として、大腸菌などの細菌が最も多く関与しています。症状としては頻尿、排尿時の痛みや刺激感、尿の変色やにおいが気になる、食欲不振などが挙げられます。起因菌の薬剤感受性試験に応じた抗菌薬の投与により治療を行います。
  • 尿路結石
    尿路内に固形の結石ができる病気です。結石は尿路の任意の部位にでき、腎臓、尿管、膀胱、尿道などにできます。原因は様々で、尿路感染症、食事療法、腎臓機能の低下、遺伝などが挙げられます。結石が大きくなると、尿の通りを妨げて痛みや尿路閉塞を引き起こす可能性もあります。外科的に摘出する方法、療法食やサプリメントの投与により再発防止を試みます。
  • 尿失禁
    自分の意思とは関係なく尿が漏れ、コントロールができない排尿障害のことを指します。原因は、先天性、尿路閉塞性、ホルモン性といった非神経性尿失禁、脊髄損傷や椎間板ヘルニアや馬尾症候群による神経性尿失禁に分類されます。治療はその原因に即した処置、手術を選択します。また、薬物による治療も行われています。
  • 膀胱アトニー
    神経原性あるいは非神経原性の原因によって生じた膀胱の過剰な拡張により、排尿筋のタイトジャンクションが破綻し、膀胱の収縮機能が欠如した状態です。治療は、原因疾患の治療を行い、排尿筋の収縮を促す薬剤の投与、圧迫排尿や尿道カテーテルの留置により膀胱を空にする必要性があります。
  • 前立腺肥大症
    犬の老齢化に伴い、精巣からのエストロゲンの分泌量の増加により前立腺組織の過形成が起こり、直腸を圧迫したり、前立腺尿道部を狭窄して、排便困難や排尿困難を引き起こします。治療は抗アンドロジェン製剤の投与もしくは去勢手術を行います。
  • 細菌性前立腺炎・前立腺膿瘍
    尿道からの細菌の上行感染によって起こり、主に大腸菌の感染が原因となります。膀胱炎を併発していることが多いとされています。前立腺炎が悪化して化膿性前立腺炎に陥った場合、前立腺肥大に伴って実質内に嚢胞が形成されていると、その中に膿液が貯留します。臨床症状は、疼痛、発熱、元気・食欲の低下を示します。治療は細菌感受性試験の結果に基づいた適切な抗菌薬の投与、貯留している膿汁の穿刺・吸引を行います。
  • 前立腺嚢胞
    前立腺の肥大に伴って、実質内の腺腔の拡張が進行すると嚢胞が形成されます。嚢胞内には周囲組織から出血した血液が、前立腺分泌液に混ざって貯留していることが多く、陰茎の外尿道口から血尿のようにポタポタと排出するようになります。治療は抗アンドロジェン製剤の投与、嚢胞が極めて大きい場合は、穿刺吸引により内容物を除去する必要があります。