内分泌科とは?

内分泌科とは、動物の内分泌系の疾患について診断・治療を行う部門のことです。内分泌系は、ホルモンの分泌と吸収によって体内の調節機能を担っています。内分泌疾患の例としては、糖尿病、甲状腺疾患、副腎疾患、性腺疾患などがあります。内分泌科では、専門的な検査や治療を行い、適切な管理やケアを行います。

気になる症状

  • 水を飲む量が増えた
  • 皮膚や、毛並みが悪くなっている
  • 元気がなくなった
  • おしっこの量が増えた

検査内容

  • 血液検査、血中ホルモン濃度測定
    血液中のホルモン濃度(コルチゾール、甲状腺ホルモン、インスリン、性腺ホルモン、パラソルモン)を調べることで、内分泌疾患の診断に役立てます。また、内分泌疾患より派生する他の臓器の機能への影響なども調べることが可能です。
  • 尿検査
    尿比重や尿浸透圧、尿中のホルモンや代謝産物を調べることで、内分泌疾患の診断を行います。
  • 副腎皮質刺激ホルモン刺激試験、低用量デキサメサゾン試験、高用量デキサメサゾン試験
    副腎皮質機能の評価に用いられます。人工的に副腎皮質刺激ホルモンやデキサメサゾンというステロイド剤を投与し、その反応から副腎の機能を評価する方法です。
  • 水制限試験
    多飲・多尿を示す動物で中枢性。腎性尿崩症や抗利尿ホルモン-腎濃縮機構の異常や心因性多尿を鑑別するために実施される検査です。人為的に動物の水分摂取を制限し、体重・尿比重。尿浸透圧・血漿浸透圧を測定します。中枢性または腎性尿崩症が示唆される場合は、バソプレシンというホルモン製剤を投与し、尿比重・尿浸透圧・血漿浸透圧を測定し、反応性を評価します。
  • 画像診断(X線検査、超音波検査、CT、MRI)
    動物の体内組織や臓器の詳細な画像を作成する非侵襲的な診断ツールです。特に脳下垂体や副腎、上皮小体の形状、大きさ、構造などを観察し異常を評価することができます。

代表的な病気

  • 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
    副腎皮質ホルモン(グルココルチコイド)が異常に分泌される病気を指します。その病型は下垂体性、副腎性、医原性に分けられます。犬に多く見られる病気ですが、猫でもまれにみられることもあります。副腎皮質ホルモンはストレス反応や水分バランスの調節、体内の塩分バランスの調整、血糖値の上昇などさまざまな役割を持っていますが、その分泌が過剰となる病態です。主な症状としては、多飲・多尿、食欲増進、筋肉の萎縮、皮膚の菲薄化、脱毛、皮膚感染症、石灰化などがみられます。
  • 副腎皮質機能低下症(アジソン病)
    副腎皮質が正常に機能せず、副腎皮質ホルモン(ミネラルコルチコイド)の分泌が不足することによって引き起こされる疾患です。犬に多い病気です。副腎皮質ホルモンには、体内の水分や電解質バランスの調節や、ストレスへの対応などが含まれます。アジソン病の症状には、多飲・多尿、食欲不振、下痢、嘔吐、虚脱、低体温、振戦、痙攣などがあげられます。副腎機能がある程度以上失われ、さらに動物にストレスが加わると突然のショック(アジソンクリーゼ)に陥ることがあります。また、グルココルチコイドのみが不足し、ミネラルコルチコイドの分泌が保たれる「非定型アジソン病」という病態も存在します。
  • 甲状腺機能亢進症
    甲状腺から過剰に甲状腺ホルモンが分泌されて起こる病気で猫に多く見られます。甲状腺ホルモンは代謝を調節し、体温、心拍数、エネルギー利用などに関与しています。甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンの過剰な分泌により、動物の代謝率が亢進し、体重減少、食欲亢進、多飲多尿、興奮や不安、脱毛、下痢、嘔吐などの症状がみられることがあります。
  • 甲状腺機能低下症
    甲状腺が十分な量の甲状腺ホルモンを分泌していない状態です。甲状腺ホルモンは、代謝や成長、エネルギー産生などの様々な生理的な機能に影響を与えます。甲状腺機能低下症は、甲状腺の炎症、腫瘍、自己免疫反応などによって引き起こされます。主な症状には、活動性の低下、低体温、無気力、体重増加、寒冷不耐性、脱毛、毛質の変化、皮膚の乾燥などがあります。
  • 糖尿病
    膵臓からのインスリンの分泌が不十分であるか、インスリンに対する感受性の低下によって、血糖値が高くなり、尿糖の出現を示す病気を指します。犬や猫の場合、特に肥満であると病気になりやすい傾向があります。症状としては、多飲・多尿、食欲増進や体重減少が見られるます。病態が進行すると糖尿病性ケトアシドーシスという合併症を引き起こし亡くなってしまう危険な病気です。糖尿病の原因は犬では、肥満の他にクッシング症候群、未避妊メスの黄体期性糖尿病、猫では膵炎が挙げられます。
  • 性ホルモン関連性皮膚症
    性ホルモンに関連した皮膚病の総称です。動物の体内で性ホルモン(エストロゲンやテストステロンなど)のバランスが崩れることによって引き起こされます。この状態では、皮膚の異常な変化、脱毛や薄毛、かゆみ、皮膚炎、乾燥肌などの症状が見られることがあります。
  • 褐色細胞腫
    主に副腎髄質から発生するカテコラミン産生腫瘍であり、循環器に影響を与える珍しい腫瘍です。カテコラミンの過剰産生により、高血圧や循環器系の症状が発現することが知られていますが、確定診断が難しい腫瘍です。診断は腹部超音波検査および尿中のメタネフリン・ノルメタネフリンとクレアチニン比の測定を実施します。
  • 原発性上皮小体機能亢進症
    動物の上皮小体(副甲状腺)から副甲状腺ホルモン(主にPTH)が過剰に産生される病気です。通常、上皮小体はカルシウムの調節に関与していますが、機能亢進症では異常な副甲状腺細胞の増殖や腫瘍が原因となり、カルシウムの過剰な放出が起こります。これにより、血中のカルシウム濃度が上昇し、多飲・多尿、嘔吐、下痢、元気消失、食欲不振、神経過敏の症状が引き起こされます。
  • 尿崩症
    下垂体から分泌される尿の量を制御する抗利尿ホルモン(バソプレッシン)の不足(中枢性尿崩症)または腎臓での反応の低下(腎性尿崩症)によって引き起こされる疾患です。尿量の調節機構が正常に機能していないため、動物は多量の希釈された尿を排泄し、体内の水分バランスが維持できなくなります。主な症状には、多飲・多尿、常に水を求める行動、水中毒のリスクなどがあります。
  • 高脂血症
    血液中の中性脂肪(TG)、総コレステロール(T-cho)、またはその両方が高値を示している状態を指します。
    原発性の代謝障害がある場合と、何らかの疾病の二次的要因として脂質成分が増加する場合に分けられます。前者に相当する疾患としては、ミニチュア・シュナウザーやシェットランド・シープドッグがそれにあたります。後者については糖尿病、クッシング症候群、甲状腺機能低下症といった内分泌疾患、慢性腎不全やネフローゼ症候群といった腎疾患、胆管閉塞などの閉塞性肝疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)のような自己免疫疾患、肥満などのさまざまな疾患に続発して発症します。また、疾患だけではなく、ステロイド剤や性ホルモン製剤などの薬物の投与によっても医原性に惹起されることもあります。