消化器科とは?

消化器科とは、動物の消化器系の疾患や障害を診断・治療する専門分野です。動物の消化器系には、口腔、食道、胃、小腸、肝臓、胆のう、膵臓、大腸などが含まれます。動物の消化器系に対する問題は、様々な症状を引き起こすことがあります。また、消化器疾患は人間と同様に緊急を要する場合があるため、症状が現れたら早めの診療をお勧めします。

気になる症状

  • 嘔吐や下痢
  • 瘦せてきてる
  • お腹が鳴る
  • 食欲の変化 ・元気がない
  • 便に血が付いている事がある

検査内容

  • 診察
    消化器の不調や病気を診断するため、まずは獣医師が診察を行います。診察は症状の確認、触診、聴診、視診などを行い、状況を把握します。
  • 糞便検査
    動物の排泄物である糞便を分析することです。糞便中には、動物の健康状態や消化器系の問題を示す情報が含まれています。糞便検査は、寄生虫や細菌の感染の有無、健康管理、治療効果の評価などに役立ちます。
  • 血液検査
    消化器にかかわる臓器や器官の病気や不調を調べるため、血液検査が行われます。消化器にかかわる臓器や器官の機能を調べるため、血液中の特定の物質の量を測定します。
  • 画像診断
    消化器や腹部の内部を撮影し、異常があるかどうかを調べるため、レントゲンや超音波検査が行われます。異常が検出された場合は、治療法や処方薬の調整などが行われます。

代表的な病気

  • 食道炎
    食道の炎症を指す病態です。食道は口から胃に食物を運ぶ管であり、炎症や病気によってその正常な機能が妨げられることがあります。食道炎の原因としては、感染症や化学物質の摂取、外傷、食道の異常な構造、異物の通過などが挙げられます。症状としては、嚥下時の痛みや不快感、口臭、嘔吐、食事嫌悪、脱水症状などが現れることがあります。
  • 巨大食道症
    動物において食道の運動機能が低下し、食物が十分に胃まで運ばれない状態を指します。これにより食道が拡張し、通常よりも大きくなってしまうため、「巨大食道症」と呼ばれます。巨大食道症の主な原因は、遺伝的要因や先天的な奇形、または重症筋無力症といった神経筋疾患などです。他にも食道の炎症や損傷、ミオパチーなどの病気によっても引き起こされることがあります。
  • 急性胃腸炎
    消化管の急性炎症を指します。主な症状には、嘔吐、下痢、腹痛、食欲不振などがあります。急性胃腸炎は通常、不適切な食事、細菌やウイルスの感染、薬物の副作用、ストレス反応などによって引き起こされます。
  • 胃拡張・胃捻転症候群
    主に大型犬に見られる深刻な状態です。この症候群では、動物の胃が異常に膨れ上がり、胃が捻じれてしまうことで消化器系の循環障害や組織壊死を引き起こします。
  • 幽門狭窄
    幽門と呼ばれる胃の出口部分が狭くなり、食物の通過が困難になる状態を指します。幽門は胃と小腸をつなぐ部位であり、食物が胃から小腸へ正常に流れるために必要な幅を保っている必要があります。しかし、幽門狭窄が起こると食物の通過が制限され、消化不良や嘔吐などの症状が現れます。外科的に治療することが一般的です。
  • 腸閉塞
    腸管内の内容物が通過できなくなり、腸管内の圧力が上がることで起こる疾患です。症状には、吐き気や嘔吐、腹痛、便秘などがあります。腸閉塞は犬や猫のような小動物でも見られ、緊急手術が必要な場合もあります。原因には、異物の摂取や腫瘍による通過障害、腸捻転などがあります。
  • 腸リンパ管拡張症
    腸管のリンパ管が異常に拡張してしまい、リンパ液の排出が適切に行われなくなる状態を指します。これにより、腸管内のリンパ液が腸壁から漏れ出し、栄養吸収や免疫機能に影響を与えることがあります。症状としては、慢性的な下痢や腹部の腫れ、栄養不良などが見られる場合があります。
  • 炎症性腸疾患(IBD)
    動物において腸管に慢性的な炎症が起こる病気の総称です。IBDは一般的には猫や犬によく見られる疾患であり、主に腸の内壁に炎症が生じ、消化器系の症状を引き起こします。典型的な症状には、慢性的な下痢、嘔吐、食欲不振、体重減少などがあります。
  • 巨大結腸症
    宿便により結腸が異常に拡張した状態を指します。この状態では、結腸の運動が障害され、便の通過が困難になります。巨大結腸症は通常、便秘や腹痛などの症状を引き起こします。
  • 便秘
    腸内の排便が困難な状態を指します。便が固くなり、排泄が遅れるために腸内に滞留します。便秘の原因としては、食物の摂取不足、水分の不足、運動不足、消化器系の疾患、ストレスなどが考えられます。
  • 直腸脱
    直腸の内側が肛門から外に突出する状態を指します。この状態では、直腸の壁が逆転し、肛門から直腸が出てしまいます。直腸脱は一時的なものから持続的なものまで、さまざまな重症度があります。直腸脱の原因は複数あり、便秘や下痢、腸の異常、肛門周囲の筋肉の弱さなどが関与することがあります。
  • 門脈体循環シャント
    肝臓を経由せずに血液が門脈から体循環に直接流れる異常な状態を指します。通常、消化器官からの栄養素を含む血液は門脈を通り、肝臓で処理されてから全身に送られますが、門脈体循環シャントではこの過程がスキップされます。これにより、肝臓の処理機能が十分に働かず、血液中に有害な物質が蓄積する可能性があります。門脈体循環シャントは、先天性または後天性の要因によって引き起こされることがあり、犬や猫などの小動物でよく見られます。症状には、食欲不振、嘔吐、意識変化、発作、尿路結石、身体の未発達などがあります。
  • 肝炎
    肝臓の炎症を指します。肝炎は、ウイルス、細菌、薬物、毒素、免疫性の問題などによって引き起こされます。炎症によって肝細胞が損傷されるため、肝機能が低下し、さまざまな症状が現れることがあります。典型的な症状には、食欲不振、嘔吐、腹痛、黄疸などがあります。
  • 肝リピドーシス
    肝臓に異常な量の脂肪が蓄積する病態を指します。一般的には肥満体の猫が食欲不振や絶食状態に陥った際に発現し、肝臓が脂肪を代謝できずに脂肪が蓄積します。肝リピドーシスは重篤な状態で、死に至ることもあります。
  • 胆のう炎
    胆のうの炎症を指します。胆のうは、胆汁を貯留し、脂肪の消化に関与する重要な臓器です。胆のう炎は、細菌感染、結石、膵炎などの要因によって引き起こされることがあります。症状には腹痛、吐き気、膨満感、黄疸などが含まれる場合があります。
  • 胆石症
    胆嚢や胆道に結石(胆石)が形成される病態を指します。胆石は一般的に胆汁中のコレステロールやビリルビンの沈着によって形成され、大きさや数は様々です。胆石が胆嚢や胆管を塞いたり、炎症を引き起こしたりすることにより、胆石症の症状が現れることがあります。一般的な症状は胸部や腹部の痛み、吐気、食欲不振などです。重症の場合は、胆嚢炎や胆管炎などの合併症も生じることがあります。外科的に摘出して治療を行います。
  • 胆嚢粘液嚢腫
    胆嚢内に粘液が蓄積して膨張し、嚢腫が形成される状態を指します。通常、胆汁が胆嚢から胆道系に適切に排出されるのですが、胆嚢粘液嚢腫では、胆汁の排出が阻害されたり、粘液の分泌が亢進したりすることで胆嚢が膨張します。この状態は炎症や感染を引き起こすこともあり、重篤な合併症を引き起こすことがあります。
  • 膵炎
    膵臓が炎症を起こす病態を指します。膵臓は、消化酵素を分泌して胃腸での消化を助けたり、血糖値を調節するインスリンを分泌する重要な臓器です。膵炎は、消化酵素が過剰に分泌され、膵臓自体が消化されるように炎症を起こしたり、膵管が閉塞されて消化酵素が逆流して炎症を引き起こすことがあります。症状には、腹痛、嘔吐、食欲不振、下痢、高熱などがあります。膵炎は、炎症が酷い場合には重篤な合併症も引き起こし、動物の命にかかわることもあります。
  • 膵外分泌不全(EPI)
    膵臓が適切な量の消化酵素を産生できなくなる状態を指します。通常、膵臓は消化酵素(特にリパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼなど)を産生し、十二指腸へ送り出して食べ物の消化を助けますが、EPIの場合、酵素の産生が不足しています。その結果、食べ物が適切に消化されず、栄養吸収が妨げられることがあります。一般的な症状には、体重減少、下痢、脱毛などがあります。