生殖器科・乳腺科とは?

生殖器科、乳腺科では、犬猫の生殖器、乳腺に起こる病気の診断・治療を行います。

検査内容

  • 血液検査
    血液中の各椎性ホルモン濃度の測定や他の基礎疾患の有無を調べるために血液検査を行います。
  • 細胞学的・細菌学的検査
    外陰部(包皮粘膜、膣)から採取した分泌物を顕微鏡で観察し、採取された細胞の評価ならびにグラム染色により細菌の分類と感受性試験を実施し、適切な抗菌薬の選択を行います。
  • 腹部超音波検査
    超音波診断装置を用いて生殖器、乳腺の状態を調べます。

代表的な病気

  • 精巣炎
    精巣炎は、精巣が外傷や細菌・ウィルスの感染により発症します。特に犬で発生が多く、ブルセラ・キャニスの感染による精巣炎が重要です。急性炎症では、精巣および精巣上体は腫大、充血、熱感、疼痛を伴い歩行を嫌がる行動をとります。炎症性滲出液などの影響で陰嚢水腫や陰嚢血腫を起こすこともあります。精巣の精子形成能は、低下あるいは消失し、生殖不能症となる。慢性化した場合、精巣は萎縮・硬結します。
  • 停留睾丸
    生後に精巣が陰嚢内に下がらず、腹腔内や鼠径部に留まってしまう病気です。腹腔内に残っている場合は腫瘍化しやすく、見た目では分かりにくいので早めに検査することが大切です。停留睾丸がわかったときは、正常な位置に戻ることはないので、腫瘍化を防ぐためにも早めに切除することが必要です。また、遺伝するの可能性があるので繁殖をしないようにしましょう。
  • 持続勃起症
    包皮から突出した陰茎亀頭が、長時間勃起したまま包皮腔内に戻れない状態をいいます。亀頭表面は極度に乾燥し、亀頭内部では血液のうっ滞が生じるので、亀頭内の血液循環がなくなり、亀頭表面が壊死します。治療は外科的な整復が必要です。
  • 亀頭包皮炎
    犬の包皮腔内には常在菌が存在し、時に包皮粘膜や亀頭表面に細菌感染が起きます。ごく軽度の炎症は、一般的にみられるため治療の必要はなく、包皮腔内に多量の膿汁が貯留している場合は治療の対象となり、包皮内の洗浄と抗菌薬の軟膏を患部に塗布をして治療を行います。
  • 子宮内膜炎
    細菌感染によって子宮内層にある子宮内膜に炎症が起こることが原因で発症します。発情周期に関係なく発症するため、性ホルモン(特にプロゲステロン)の関与はないと考えられています。治療は抗菌薬の投与が有効ですが、子宮蓄膿症への移行を考えた場合、子宮卵巣摘出術を実施したほうがよいと考えられています。
  • 子宮蓄膿症
    子宮内に細菌が入って炎症を起こし、膿がたまる病気です。症状は、お腹がふくれてきたり、水をよく飲むようになって尿量が増えたり、陰部から膿や血混じりの分泌物が出たりします。避妊手術をしていない中年期以上の犬猫によく発症する病気ですが、不妊手術で100%回避することができます。治療は子宮卵巣摘出術もしくは子宮収縮薬の投与を行い、抗菌薬の投与を行います。
  • 膣炎
    犬で比較的多くみられる疾患です。原因として、細菌、ウィルス、腫瘍、膣の先天的異常、外傷および異物などが挙げられますが、最も多いのは細菌性膣炎です。また、犬において、性成熟前にかけて外陰部から膿様物が排泄されることがあり、若年性膣炎と呼ばれています。膣炎は全身症状を示さず、局所的に起こるために、犬がしきりに陰部を舐めることで気づかれることが多いです。慢性化した場合、子宮蓄膿症へ移行する可能性もあるため、注意が必要です。治療は抗菌薬の全身投与、またはクロルヘキシジン、ポピドンヨードといった洗浄液による洗浄を行います。
  • 偽妊娠
    犬は、排卵後の黄体機能は妊娠の有無に関係なく類似しており、約2か月間持続します。妊娠していないにもかかわらず、妊娠犬と同様の乳腺の腫大、乳汁分泌や営巣行動など行動の変化の症状を示します。生理的な現象であり、時間の経過とともに乳腺は自然退縮するため、無治療のことが一般的です。
  • 乳腺炎
    授乳期に乳腺組織内で細菌感染によって乳汁が滞って乳腺の炎症が起きる病気です。乳腺の腫脹、熱感硬結または疼痛を伴います。抗菌薬による治療を行います。