呼吸器科とは?

呼吸器科とは、動物の呼吸器系(鼻腔、咽喉頭、気管、肺や胸腔内など)に関する疾患を診断・治療する診療科目です。主に発症する疾患としては、感染症やアレルギーによる炎症性疾患、軟口蓋過長症、短頭腫気道症候群といった先天性疾患、気管虚脱、気管支拡張症、喉頭虚脱・麻痺といった解剖学的な異常、腫瘍性疾患また膿胸や気胸といった胸腔内疾患などが挙げられます。専門的な設備と知識を持った獣医師が診察や治療を行い、必要に応じて検査や投薬、手術を行います。

気になる症状

  • 咳が出る
  • 疲れやすい
  • ゼーゼーとした呼吸をしてる
  • ご飯の時にむせる
  • 呼吸が苦しそう
  • 舌の色が青い
  • 元気がない

検査内容

  • 血液検査・血液ガス分析
    白血球やCRPという炎症の数値の確認、また、他の臓器の機能を調べ、呼吸器疾患に合併している病気の診断などの際に使用します。血液ガス分析を行い、呼吸状態が体へ及ぼしている影響や血中の酸塩基平衡の状態を調べます。
  • X線検査
    頭部、頸部、胸部のX線検査で、鼻腔内、咽喉頭部、気管、気管支、肺、血管の評価を行います。胸や気胸の有無もなど胸郭内の診断が可能です。
  • 超音波検査
    肺炎や肺水腫や胸腔内の腫瘍の有無の確認、気胸や胸水の貯留がないか確認をするために用いられる検査です。また、喉頭の動きや構造の異常を診断するためにも使用されます。
  • 内視鏡検査
    鼻腔内から気管支までの異物や腫瘍の有無の診断、また喉頭の動きを評価することに用いられます。
  • CT検査
    X線検査では検出が困難な炎症性変化や腫瘍の診断、胸腔内の構造の異常の変化を調べるために用いられます。また、腫瘍の摘出のための手術計画として用いられることもあります。

代表的な病気

  • 鼻炎
    動物の鼻の粘膜が炎症を起こした状態を指します。鼻炎は感染症、異物の混入、アレルギー、外傷、腫瘍による二次的な炎症変化または化学物質の刺激などさまざまな要因によって引き起こされます。鼻炎の症状には、くしゃみ、鼻水の増加、鼻出血、鼻づまりや呼吸困難、鼻の違和感、咳、食欲不振などが含まれます。
  • 犬伝染性気管・気管支炎(ケンネルコフ)
    主に若齢の犬において急性かつ非常に伝染力の強い呼吸器疾患です。本疾患の原因となる病原体はウィルスや細菌の複合感染と考えられています。一般的な症状には咳、くしゃみ、鼻水、咳き込んだ後のえずきなどが含まれます。軽症で治癒することもありますが、重症化により慢性化してしまうこともあります。
  • 猫の上部気道感染症
    猫の上部気道(鼻、喉、喉頭)に感染症を発症した状態を指します。これは一般的に猫カリシウイルスやヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス感染症です。症状にはくしゃみ、鼻汁、鼻出血、鼻づまり、食欲不振などがあります。
  • 肺炎
    一般的に肺組織の炎症を指す疾患です。肺炎は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などの病原体によって引き起こされることがあります。これらの病原体が肺に侵入すると、肺組織は炎症や充血を起こし、呼吸困難や咳、発熱などの症状が現れることがあります。また、異物や吐物などの誤嚥による誤嚥性肺炎の場合は重大な致命的な炎症を引き起こすことがあるため、注意が必要です。
  • 猫喘息
    猫における慢性の気管支炎や呼吸器疾患の一種です。猫喘息は、猫の気道が炎症や収縮を起こし、呼吸困難や咳、ゼーゼーという音を立てるなどの症状が見られます。原因としてはアレルギー反応や環境要因、遺伝的要素が関与していると考えられています。
  • 気管虚脱
    主に小型犬に見られる疾患であり、気管軟骨の脆弱化によって気管が潰れてしまう状態を指します。これによって気管の内径が狭くなり、発咳、喘鳴、呼吸困難、チアノーゼなどの症状が現れます。
  • 喉頭麻痺・虚脱
    動物の喉頭にある声帯や軟骨が正しく機能しない状態を指します。この状態では、喉頭が開くための筋肉が正常に機能しないため、呼吸困難や喘鳴が起こることがあります。喉頭麻痺・虚脱は特に大型犬や高齢犬によく見られます。
  • 気管支拡張症
    気管支癖の弾性や筋組織が崩壊し、気管支の慢性の異常拡張やゆがみを起こした病態と考えられています。慢性の感染症や炎症性肺疾患の結果として起こることがあります。主な臨床症状は咳、嗚咽、粘液膿性の喀痰、呼吸困難などです。
  • 膿胸
    膿が何らかの理由で胸腔内に溜まる病状を指します。感染経路はほとんどが不明で、経気道感染、経食道感染、胸壁からの直接感染などが考えられています。犬では、イネ科植物や異物、胸壁の穿孔から、猫では胸部外傷などにより膿胸に至ることが多いです。症状は、元気消失、食欲不振、浅速呼吸、呼吸困難、発咳などです。重篤化すると、呼吸不全や敗血症、悪液質やDICなどにより死亡してしまう恐ろしい病気です。
  • 気胸
    何らかの原因で胸腔内に空気が貯留している病状を指します。胸腔内に空気が異常に蓄積することで、肺の膨張を障害することにより重篤な呼吸障害を引き起こします。気胸は外傷などによって引き起こされることがあり、緊急の治療が必要となります。
  • 乳び胸
    リンパ液がリンパ管から胸腔内に漏れ出して溜まっている状態を指します。比較的珍しい疾患で、原因として外傷や心臓病、胸腺腫、縦隔型リンパ腫、犬糸状虫症、静脈血栓症、肉芽腫、奇形などが知られていますが、そのほとんどは原因がわからない特発性です。症状は食欲不振や元気消失、体重低下、呼吸困難、発咳など色々な症状が認められます。